なおみ先生(みどり組編)
みどり組(年長組)になっても、なおみ先生の指示による「倉庫でのひとり給食」は続いた。
ある日、教室での遊びの時間にクラスの女の子とケンカをした。
原因は覚えないけど、友達から先に積木を投げられたことは覚えてる。
積木を投げられたので、私も積木を投げ返したら相手の子が泣き出した。
そしたらなおみ先生が来て。
積木を投げたことを私だけが叱られた。
「先に〇〇ちゃんが積木を投げた」って言ったけど、私だけが叱られた。
チューリップの形をしたみどり色の名札を、もも色の名札に変えられた。
もも色の名札は年少組の「もも組」の名札で、年長組の私から見たらうんと小さい子が付けている名札だった。
きいろ組の弟が付けている名札より幼い名札だった。
毎日保育園に来たら、みどり色の名札をもも色の名札に付け替えるように言われた。
もも色の名札を付けることは、真っ暗な倉庫で給食を食べることより嫌だった。
恥ずかしくて恥ずかしくて、保育園に行きたくなかった。
なおみ先生が嫌いで、いなくなってほしいと思っていた。
「子供は純粋無垢」なんて言う人がいるけど、ほんとにそうなんかな。
私だけがおかしくて、他の人たちはみんな純粋無垢な子供だったんかな。
私は毎日なおみ先生に消えてほしいと思ってたし、保育園なんて楽しくも何ともなかった。
お遊戯会も遠足も運動会も全然好きじゃないし、仲良しの友達もいなかった。
こんな子供が純粋無垢なわけがない。
子供時代に戻りたいなんて絶対に思わない。
大人になれて良かった。
仕事で大変なことはあるし、親も病気するし、旦那はアホなことばっか言うけど、子供の頃に比べたら遥かに楽だ。
なおみ先生には会いたくないし、生きてるんかも知らんけど、ご健在なら伝わってほしい。
「私のこと覚えてますか。
私は先生のこと忘れません。
こないだ35歳になりました。
今でも先生のことが嫌いです。」